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辻さんのどうしようもない日々を綴ったもの。創作・ゲーム・アニメなんかについて。気が向くとレヴューとか書くよ。内輪のヒトしか分かんないね。内輪のヒトでも分かんないね。


by Garden-of-Delight
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続・分かる人にしか分からないモズネタ晒し

その山奥の庵に、男はひっそりと暮らしていた。もうどの位こうしてきただろうか。最後に人里を追われてから数十年は経ったかもしれない。いや、数年だろうか?無関心な出来事への記憶は曖昧なものだ。ともかく男はもう随分長い間鳥のさえずりや渓流の音しか耳にしていなかった。人と関わる機会は殆ど無かったし、それを求めることも無かった。

彼の最初の記憶は紅蓮の炎に包まれた研究所。そこから逃れて以来、全くのその日暮らしを続けてきた。最初にたどり着いた村からはすぐに追い出された。追い出されたと言うよりは殺されかけたのだが。死んだはずの人間の体に宿っていたのだから無理もないが、出会う人間は彼の存在に寛容ではなかった。
宿主の体から僅かに引きずり出した記憶は不十分で、人語を解することは出来たが、多くの部分で人間らしさを欠いていた。彼が捕食の際行う「行動」は人々には〈神〉または〈鬼〉と呼ばれるものの様に映った。
ともかくあらゆる状況で彼は社会から逸脱した存在だった。ありとあらゆる罵声、雑言、否定の言葉。生まれたばかりの生命は残酷な洗礼にさらされてきた。それは暴力でも、飢えでも、寒さでもない。
他ならない孤独だった。

何度目かの絶望の末に、彼は人との繋がりを絶つことにした。それはとても辛い決断だった。どんな目に合わされていても、人間を嫌いになることは出来なかったから……

風や木や陽射しはいつだって優しかった。名も知らぬ小鳥が榛の実を運んでくるのが、専ら彼の楽しみだった。彼は最低限の食事の為以外は決して山を傷つけなかったし、いつだってその恵みに感謝していた。自分が何者であるのか、気にならなかったわけではなかったが、さして悩みはしなかった。
時折人里近くに降りていっては打ち捨てられたものを拾って集めた。使い方の分からないようなものから本や壊れた鍋の蓋。様々ながらくたをためつすがめつし、人々の営みを想像する。これもまた彼の楽しみの一つだった。


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モズの過去SS。まだ続くっていうかこれが序にあたる。でもこの後公開するかは未定~(°∀°;)うひょーハズカシー。年代設定が難しい。モズ生誕って幕末くらいなんだけど当時日本って科学研究皆無に近かったからモズ・メリーアンの宿主たちって当時にしたらすごい異端者だっただろーなとか想像して萌えた。だって当時蒸気機関がやっと開発されたくらいだし。多分メリーアンの家は舶来かぶれの貴族とかだったんだろう。日本史超専門外なんで誰か教えてくれ~。
なお、三人称はまだモズに名前が無いからこうなっている。順調に行けばこの後名前イベントが入るはず。あと帽子イベント。
by Garden-of-Delight | 2007-05-04 14:50